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◇第三次世界大戦<the Third World War>名/歴

 人類社会における三度目の世界戦争。
≪解説≫
 第三次世界大戦は、2265年から32年間続いた。
 人類社会の中心が宇宙に移行するにつれて地球上の国家再編成相次いだ。その中で宗教的結束よりも経済的統合を目的に結成されたイスラム連合が2199年に結成された。
 イスラム連合はその中心をパレスチナ協調会議におき、ベエルシヴァ=ナタニア議長を盟主にとして選出した。石油の枯渇後その主力産業を失い、国連の支援を受けるまでに国力は失墜していたイスラム諸国はその大半が加盟した。
 緩やかに成長を見せ始めたイスラム連合は2245年に勃発した第二次環太平洋戦争により特需景気に沸き、急激な経済的成長を見せた。また、各国の併合に伴いその軍事力は世界第二位となっていた。
 しかし2265年、第8代議長ケジオット=アスケロンは周辺の議会内勢力を統合し実に18年もの間、議長の座に座り続けた。徐々に軍事独裁政権の様相を呈してきた連合は、国力増強を目指し2265年8月21日、武力をもってウクライナ共和国へ侵攻した。ウクライナは当時世界第5位の穀倉地帯であり、イスラム連合は結成直後よりウクライナへ加盟の圧力をかけ続けていた。それに対し国連軍が介入、ウクライナは中立地帯となり勝敗の決まらぬまま暫定的な停戦が結ばれた。
 2376年、イスラム連合は再度ウクライナへ侵攻。一気に占領を図った。それ以降、アメリカ合衆国軍を中核とした国連軍がその侵攻に介入するが、イスラム連合は同盟国を増やし次第に勢力を増強していった。
 異常で残忍なまでの大量殺戮が繰り返され、2296年、ついにアメリカは戦争終結を名分に開発して間もない「縮退爆弾」、のちに言うところのニュートリノ爆弾の使用を強行した。縮退爆弾は、発射9秒後に暴発。大量のニュートリノと熱線をまき散らし、瞬時にして5億人の命を奪った。結果、戦争の継続はおろか、地球上での人類の営みすらも不可能となり、翌年第三次世界大戦終結が便宜的に宣言されると同時に、全人類地球脱出計画(第二次方舟計画)が発動し、人類は地球を離れた。この戦争における死者は60億人とも70億人とも言われ、人類史上最悪の戦争として幕を閉じた。

◇第二次方舟計画<the pjoject of the second ark>名/歴

 人類史上最大の脱出作戦。

<参照>全人類脱出計画

◇タイムジェネレーション理論<Time Generation Theory>名/論

 現代の物理法則のパラダイム。時間概念を中核に理論を展開。TGT。
 《解説》
 2174年にアンセルム=ヤンにより「タイムジェネレーション理論(TGT)」が発表された。後に完全な統一理論、「最終大統一理論(F*GUT)」の基幹となる。
 このタイムジェネレーション理論こそが、トランスポートゲートなどの数々の技術を可能にし、また24世紀現在も物理法則のパラダイムとして働いている。

 タイムジェネレーション理論(TGT)の大意を伝えるときによく言われるのは「時間とは未来から過去へ流れる」という説明である。

 TGTの目的は「力」の統一が目的であった。その中でも「時間」という「概念」に注目し理論が構築された。過去の如何なる理論においても時間を中枢に据えた理論はなく、人類の宇宙観を大きく変えた「相対性理論」でさえ「時間」とは付随的な物に過ぎなかった。
 
 TGTはまず「11次元宇宙」を導入し、そこから「超ひも理論」に乗っ取って理論の展開を進めた。
 ヤンは4つの力の原初の追及を行い、そして提唱されたのが「フランデル粒子」であった。フランデル粒子は時間概念を包含した「総合力場粒子」で、超ひも理論で提唱されていた「原始の力」とは全く違ったもので、また後述する「T粒子」と共に「T-'粒子」を逆行する全ての「力」が高位相時間に進入する際に発生し、「絶対値をとる時間概念」に対して「場の制限を持つ空間」における存在量により発生させる「力」を変化させる。
 フランデル粒子は半整数のスピン「1/2」を持つ「フェルミ粒子」に分類されその存在量により四つの力を発生させる。
 フランデル粒子は10の−44乗秒間は「ツェルニー粒子」と「対称性」を持っているが、それ以上経つと力場を変化させてしまい対称性の崩壊、つまり「F/T対称性の破れ」が生じ る。「ツェルニー粒子」の仮定は同時に「T-'粒子」提唱につながった。
 T-'粒子は「時間の本質」とされる「概念」で10の−44乗秒ごとに、時間を過去から未来へと流れる「T粒子」と、時間を未来から過去へと流れる「T−粒子」を対生成する。「T−粒子」は「T-'粒子」と並行するため一般的には「T-'粒子」と呼ばれ「時間の対生成・対消滅」の論議以外では区別さない。
 ここでも特に注意がない限り「T−粒子」を「T-'粒子」と呼称する。

 「T-'粒子」提唱によって大きく宇宙観と時間観が変化した。
 時間の本質であるT-'粒子は過去に向かって「相転移」を繰り返し、そこで不安定要素としてT粒子が発生し「エントロピー」が生まれる。

 タイムジェネレーション理論発表後、この理論を検討した科学者たちが頭を悩ませたことは、T粒子が発生した時点のことすなわち「宇宙の始まり」の時点であった。
 エネルギーをエントロピーに託して過去へと相転移していくT-'粒子は過去に向かうに連れてどんどん弱くなる。これは時間に置き換えて説明すると、どんどん時間の流れる速度が遅くなっていくという事である。逆の言い方をすると未来に向かうほど時間の流れは速くなると言うことで、今日の単位時間よりも明日の単位時間の方が短いと言うことである。
 TGTのより導き出された公式によると過去になれば過去になるほど時間は無限に長くなり、その始まりつまり宇宙の始まりにたどり着くことは出来ないという結論が導き出される。
 これが発表された当時、だれもがこの理論を疑ったが、研究が進むに連れてその証拠が徐々に見つかると支持者も増え、今やそれを疑う物理学者は存在しないといえる。

 そのほかにTGTがこれまでと違った提唱をしたのが「時間概念」である。
 相対性理論以降、時間も空間も絶対的なものではなく相対的なものだとされてきた。しかし、TGTでは「時間はゲージ対称性を保ったまま絶対的なものである」とし「相対論等で時間が相対的に見えるのは、空間に包含される質量・エネルギーが一定枠の時間概念に指定される場合、同様にその空間に包含される観測者には、与えられた質量・エネルギーに相関して時間が客観上“見かけの変化”を起こすためである」とし、これに基づいた観測結果では、相対論の公式を使って誤差の出ていた値が、TGTにより100%一致することがわかっている。
 これは相対論がT粒子及びT-'粒子の起性値をその公式に組み込んでいなかったためで、今から考えると当然の結果であったといえる。

 その後、コールマンにより「フランデル粒子」の存在とそれに伴う空間変化「コールマン変動」が発見され、補償理論としてクラウディア=ホーキンスにより「宇宙一点論(CPPT)」が発表され、それらをミノル=オオトモがまとめ上げた「時間宇宙論(TST)」が発表されると、遂に2222年、「最終大統一理論(F*GUT)」が発表され、現在に至るまでも物理法則のパラダイムをなしているということは繰り返すまでもないことである。

◇地球<the Earth>名/星

 太陽系第三惑星。人類発祥の星。
 ≪解説≫
 太陽系第三惑星「地球」は人類発祥の星である。人類は2100年の火星移民開始まで唯一地球上で生活をしていた。地球は200近い国家と最盛期には約96億の人口を抱え、また人類活動の中心地であった。
 しかし、2296年のニュートリノ爆弾暴発事故により地球での生活は不可能となり2301年、地球は一切の立ち入りを禁止された封鎖惑星となった。
 その翌年から、地球には定期的に無人調査船が降下し地上の状態を報告しているが、人類がそれ以来、地球の土を踏んだことはない。
 現在の地球は、2300年に施行された地球上居住禁止条約による防衛衛星(地球への不法侵入を防ぐため)が無秩序に無数に取り巻いている。また、第三次世界大戦時に使用された通信妨害用のナノフラグメントが大気中を漂い地球での夕暮れ時には燃えるような夕日を見ることが出来るらしい。
 現在のところ、人類が地球へ帰れる日の見通しは立っていない。

 惑星地球は赤道半径6378km、公転周期は約365日、自転周期約24時間の天体である。衛星「月」を一つ持つ。表面に液体の水を湛え、地表の70%を覆う。
 理想地球の平均気温は15℃で大気成分は窒素78%、酸素20%、地表大気圧1であり、これらの条件がテラフォーミングレベルAAとされている。

◇テラ=フォーミング<Terra Forming>名/技

 天体環境を地球の理想環境に変化させる方法、または人類の居住可能な環境を作り出す方法。T*F。
 《解説》
 テラフォーミング(以下、T*Fとする)は人類の直接的な「生存」のため以外に「地球」という星そのものの仕組みを知るためにも重要な役割を果たした。
 T*Fでまず重要なのは「気温」と「大気」である。気温には液体化した「水」を得るためにも重要な要素である。理想地球の平均気温は15度で大気は窒素78%・酸素20%、地表大気圧1。
 テラ=フォーミング初期の気温上昇の方法には炭酸ガスによる天体の温暖化、極薄の太陽光反射シートによる太陽光の増幅が行われた。火星本星は主にこの二つの方法により気温上昇おこなった。科学技術が進歩すると低速のビーム放射による人工太陽の使用があり、これは木星衛星のT*Fに使われた。そして最新の方法がトランスポートゲート(TPG)による太陽からの光熱の転送である。これにより大規模なテラフォーミングか可能となる。この方法は土星衛星のT*F以降その作業の中核に据えられキルクークなどの惑星もすべてこの方法で光熱を得ている。
 大気の理想化には「アウセプター」という捕獲気体が不可欠でこれが発明されていなければ、現在のような高速なT*Fは不可能だったのは確実である。
 大気成分の構成には人工の大気構築工場と遺伝子改良された植物により行われる。人造植物のオオクギツリーはクロレラの20倍の光合成効率を持ちその成長速度も1年で5M級の樹木になるというものせある。ただしそれ相応の水と栄養が必要となる。火星にある全高154Mの「火星の樹」は最初に植樹されたオオクギツリーである。
 土壌改良は耐荒野改良された植物とそれを食べる動物、さらにバクテリオ=ナノマシンにより行われるのが現在でも一般的だろう。
 しかし、いかなる方法を採っても一気にその天体を地球環境化することは不可能であり初期の段階では、100万人級都市とそれを覆うドームなどが各地に建造され、そこを基点に徐々にテラフォーミングは行われる。そして、テラフォーミング開始より300年たった火星ですら今もT*Fは続いている。地球を破壊した我々にとって、それは大きな代償でもあり、よって不断の管理と技術投入が必要なのである。

◇トランスポート<Transport>名/技・交

 タイムジェネレーション理論(TGT)によって提唱された非空間移動の総称。
 《解説》TGTによると「物質の最小状態であるスーパーパーティクルは空間としての物質の性質と、時間としてのT粒子の性質を共有している(時空共棲)」と表される。そのスーパーパーティクルの状態は波動関数により表され、この場合、空間軸だけでなく時間軸も考慮される必要がある。 
 トランスポートはスーパーパーティクルの時空共棲を利用している。トランスポートは通常トランスポートゲートを発動機関として使用する。トランスポートゲートは正物質の侵入第一段階でその構成をスーパーパーティクルのレベルまで分解(認識)する。第二段階でその各スーパーパーティクルに各々のエネルギーを持たせ、それをアドレスとする。第三段階でT-'粒子に変換される。この際T粒子とT-'粒子のエネルギー差はエントロピーとして扱われるがこれは保存される。T−’粒子となったスーパーパーティクルは第四段階で無延放延を起こし十次元宇宙に圧縮される。この際のT-'粒子はそれだけで“全方向の宇宙状態”となる。この状態で転送先のトランスポートゲートに送られる。これが第五段階。第六段階で十次元宇宙にあるT-'粒子は四次元宇宙に戻される。これは第四段階突入後10の−44乗秒後に起こりそれは十次元宇宙の寿命と同等であるとされる。最終段階で転送先のトランスポートゲートにて第二段階でつけられたアドレスに沿って第三段階から逆の作業で正物質が再構成される。
 
 さて、これまでの説明で量子力学(quantum mechanics)を多少勉強したことのある者なら次の様な問題を思い出すはずである。それは『ハイゼンベルグの不確定性原理(uncertainty principle)』である。スーパーパーティクルが量子力学で扱いきれる粒子であるならば、各粒子の場所を特定して再構成するのは不可能である。しかしスーパーパーティクルは量子力学で扱いきれる粒子ではない。スーパーパーティクルは粒子であると共に『概念』でもある。つまり純粋にTGTで扱うことの出来るモノ(概念)である。言い換えればT-'粒子であり、T-'粒子は「宇宙の終わり」の点を指定することで現在のエネルギー値の特定が出来る。それはT粒子とのエントロピー差から求められるもので「宇宙の終わり」をどの点に設定してもその相対エネルギー値からT-'粒子のエネルギー値が特定できる。このことによりT-'粒子から各エネルギー値のスーパーパーティクルに戻される。よってハイゼンベルグの不確定性原理の問題はクリアされる。
 尚、この事実も“宇宙一点論(CPPT)”を裏付けるものではない。

◇トランスポートゲート<Transport Gate>名/交

 トランスポート発動機関の総称。トランスポートを実行するための交通デバイス。TPG。
 《解説》
 2235年ににトランスポートゲート計画が発動。地球資本のココモ工業エルステーノを中心とした地球と火星による共同事業であった。2250年を目処に「非空間移動」を目指すが大恐慌や戦争のために計画は大きく遅れた。2259年に試験トランスポート・ゲート一番基:TPG-TQ01A型が完成し2年後の2261年に試験トランスポート・ゲート二番基:TPG-TQ01B型が完成した。ついに2262年にTPG-TQ01A型を小惑星セレスより4万kmの地点に配置しTPG-TQ01B型を地球火星のほぼ中間の地球から0.25天文単位の地点に配置したトランスポート実験が開始される。。
 2264年、第一次試験として無人機を使用するが失敗。2265の第四次試験にて初のトランスポート成功。この年がトランスポート元年となった。2267年にサルを使った生体トランスポート実験にを行うが実験は第一次実験から全て成功。そして2269年に人類が初めてトランスポートを行った。2272に試験トランスポート実験が終了し実用化に向けた開発が始まった。
 このトランスポートゲートの開発により物理界は元より経済論理や哲学に大変革をもたらすことになった。


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